6/10/2012

Dad はかく語りき




おそらくヨーロッパから来たんだろう。


とあるカフェで勉強していると、とても美人な娘2人とそのお父さん、お母さんが自分の左前の席に座った。お父さんは一眼だけ携え、それぞれ軽装である。家族全体の服装はとてもシンプル、あっさりしていて、かつ似通っている。

娘2人はおそらく20代後半。自分よりも年上な女性の雰囲気にどこか羨望の念を感じる。

それにしてもこのお父さん。どうやら家族内での立場が低そうである。女3:男1。あまり喋らない。勝手にDと雰囲気が似ているとふと思う。父に似ているのか、せっかくカフェにやってきたこの家族の静寂は長い。

自分も将来あぁなるのか?とちょっと困る。大丈夫だろうか?唇を真っ赤にした Katy Perry にそっくりでもっと奇麗な店員さんは相変わらずせっせとテーブルを拭いて働いている。 黒髪に黒いTシャツ、赤い唇に加え青みがかった灰色の目の相性は抜群である。

娘達の時々の会話にお母さんもジョイン。お父さんは僕の席の右側の大きな窓ガラスをぼーっと見ているのか、もしかしたら珍しいかもしれないこのアジア人を見ているのか定かではない。窓の向こうでは黒人のおじさんが時に携帯をピコピコといじりながらサックスを路上で演奏している。下手でもなく、とりわけうまいというわけでもない。ただこの町の雰囲気を作る大きな手助けをしているのは間違いない。陽光の中、涼しいサンフランシスコに温かい雰囲気をかもし出す。


お父さんは彼の演奏に影響を受けたに違いない。


“さて、そろそろ行こうか。”という感じでこの家族は特に何を言うわけでもなくそっと立ち上がり始めた。お父さんは最後に立つ。
はぁ、行くのかい?という顔である。お父さんは完全に出遅れている。娘はすでに外で立ち話を始めた。そこにお母さんも、私もー、みたいに入る。実はお母さんが一番背が低くてジョインする時が可愛らしい。お父さんもようやくジョインし、なんとか会話に入っているようである。“ぼくここには行きたいのっ”。 低い立場といい、下から2番目の背の低さといい、双璧のごとき娘2人に必死な抵抗の様相である。合同した3人は歩き始めた。ジャズのおじさんはまだ演奏している。にも関わらずお父さん、なぜか反対方向に歩き始めている。いや、あの黒人のおじさんの方へと小走りしている。あ、お父さん!チップを渡したぞ!ジャズのおじちゃんはチップを何度ももらっているが、最後にがっちりと握手しあそこまでの笑顔を見せたのはお父さんで初めてである。家族内での立場は低いし、あんまり喋らないし、服装がTシャツGパンであっさりしてるけど、感謝の心を忘れない立派な1人の男である。
European dad in SF !  European dad in SF ! 







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